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下町の顔
FACE


外れたところとのことですが、やっぱり客商売でしょうから、人にPRするという意味でも大きな通りにあったほうがよくないですか?
うん、やっぱり扱うものが美術品ですからね。商品ではなくて作品ですから。
表通りに面してあんまりごちゃごちゃになるよりは、あそこにこういうのがあるわよって好きな人たちが広めて下さればいいと思いますよ。

なるほど。隠れ家的というか、知ってる人だけ好きな人だけに来ていただけるっていうのはありますね。
いやぁ、でもいろいろだと思いますよ。
例えば私がいた頃は銀座は登録されているだけで450の画廊がありました。ところがもう1Fから入れるところは無くなっちゃいましたね。数えるほどしか。みんな裏通りだったり、隣が居酒屋さんだったり、全然違う職業の間でかろうじて残っています。あとはみんなビルの中。地下だったりエレベーターに乗って上にあがんなきゃいけなかったり。
それでもやっぱり銀座で展覧会をやるっていうのも、それはそれで1つのステータスですからね。

先程、文化がわかる人たちって言われましたけど、美術に興味のある人、見てわかる人って、結構このあたりっているんですか。昔ながらの下町っ子って、美術なんて関係無いやってイメージがありますけど。
いや、裏は花色もめんですよ。やっぱりいろんな意味でこだわりは持ってる人が多い地域ですから。

わかるのは作家だけなんです
そうか、粋な人が多いですものね。
それと東よりも西にあるの都心に顔が向くってこと、ありますよね?このあたりだと日本橋や銀座なんてすぐに行ける距離でしょ。そういうところに顔を出してる人って目は肥えてますよ。本当に肥えてます。ええ、あのブランド品では選んでない。
でもそういうことではなくて、もっと生活に近く感じて下さっていると私は思ってます。
あの、本当に解ろうとして見ないで欲しいです。アートは解ろうとして見ないで欲しいというのが私の持論なんですけど、わからないですって。わかるのは作家なんですよ。作っていらっしゃる方が、これはこうしてこうしてっていう想いと、その腕から先の技術がひとつになってできたものが作品ですから。それをわかるっていうのは絶対できないし、しちゃいけないと思うんですよね。

というと何を感じればいいんでしょうか?
作られたものへの情熱、美しさとか面白さだとか、そういうものですかね。

逆に目が肥えているとあまり生半可なごまかしは出来ないですね。
そう、毎回真剣勝負だと思ってます。まあ真剣勝負の中には時にはね、なんじゃこりゃと思うような事もありますけども、それはそれとして。
ハズレもあるでしょうしね(笑)。毎回成功しちゃったらねえ、パーフェクトってことはありえないですから。
でもまた、なんかね、そういうハズレがまたほのぼのとしてよかったりもするんですけどね。

絵の商売って難しいですよね。素人ではわからない部分も多いし。例えば巨匠と言われる人の作品の値段なんて基準がなんだか私たちには全くわかりませんものね。
逆に埋もれてるものにも良いものは沢山あるんですよ。
だから評価されてきてる人たちはそれに甘えてはいけない。見る側もブランドに惑わされては行けない。
腕が無くても一生懸命魂込めて心をこめて作ってこそいい作品ってありますもの。

ところで、はす向かいに最近レストランも作られたんですね。つくりが似てますが何か関連性ってあるんですか?
あ、ジョリージョブですね。こちらをやってくれた設計建築家と同じ方がやってくださったんです。

あ、そういうことなんだ。
うちでちっちゃなワンコを飼い始めたんですが、犬が1匹いるだけで外でコーヒーひとつ飲めない。ドッグカフェっていうペットが同伴できるお店もあるにはあるんですが、どうもインスタントみたいな食べ物のお店ばかりでね。
それでつくったんですよ。
シェフもフレンチをずっとやってらした方で、週代わりのランチもお昼からこんないいの食べちゃっていいのかなってくらいリーズナブルにおいしいものいただけますよ。

室内風景
最近できたばかりなんですよね。ずいぶんと評判だって聞きましたよ。
雑誌なんかでも色々取り上げて頂いているせいですかね。ワンチャン飼ってる方って、結構不自由なんですよね。

2.変わったようで変わらない
下町の話を少ししましょうか。小さい頃の下町での思い出ってどんなことがあります?
川があって、原っぱがあって、空があって。そこで飛行機雲なんか見てるとドキドキしたりして。
あれ、どこまでつづいていくんだろうとか、何で飛行機なのにあーやって白い雲になっちゃうんだろうとか、そんなこと思ったことありませんでした?

★その頃から感性豊かだったんですね。でも江東区ですよね。まだ原っぱとかありました?
ありましたよ。
友達なんかと皆で遊びに行こうって言うとまだ空き地がちょっとあったりして、有刺鉄線くぐったりして入っていきましたね。雪が降るとみんなで小学校を抜け出して雪だるま作って遊んでたりとかね (笑) 。

下町っていうか江東区で昔と変わったなあっと思うとこありますか?
あの、下町って北海道でも九州でもどこでもあるじゃないですか。だけど私、この町って下町って思ってないんですよ。
どこでもそうだと思うけれども、そこで生まれて育ってずーっとその土地に居る人は、もうそこがすべてだし、当たり前になってるし、土人になっちゃってるわけじゃないですか。
だからまるっきり外から来た人は下町って感覚で触れても、元から居る人は変わったようで変わってないと思う。

内面的な部分では変わってないってことですね。
そうかもしれない。瓦屋根の家はマンションやビルになってるし、モダン建築にもなってる。そうやってぱっと見は変わってますよね。でもそれを動かしている人たちはやっぱりそんな変わってないと思う。
でもその中にも、いいものは変わらないねえっていうのもあるし、変わりようがないからあきらめるかなんてのもあって、色々あるじゃないですかねえ。

この町の好きなところってどこですか?
季節があるところが面白いですね。
やっぱり人間も自然の一部ですからね、正月が来ると言って餅をついて、節分だよって言って豆まきやって、ほう桜が咲いたぞって桜を見に行って、もうホントに季節をみんな当たり前のように楽しんでる。
忙しいと言いながらも凄く楽しんで過ごしていますよね。3年に1回のお祭りもそういうことですよね。
だから私もここで季節感のあるものを企画してやるようにしてるんですよ。

なにか座右の銘はありますか?
明るく、元気に、頑固婆あって感じかな(笑) 。愉快な仕事、眉間にしわをよせないで楽しくお仕事しようよっていうので、レストランもJoly Jobにしたんです。

あ、なるほど。わかりやすいですね。


清澄白河は江戸資料館、現代美術館、商店街の創作イベントと、アートに触れる機会が他より多い地域です。そんな環境でアートが自然と生活の一部となるようこころみ続けるみどりさん。今後も、この地域での楽しい企画を期待しています。
※2005年2月収録
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