下町の顔 | FACE |
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第29回
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Barオーパ門前仲町店店長 水澤 泰彦さん |
門前仲町の交差点から永代通りをはさんだ南側に、京都の先斗町を思わせるような細い路地の飲み屋街があります。雑多な人々であふれています。そんな一角ですが、銀座と比べて遜色のない雰囲気で、シャレたカクテルを静かに味わうことのできる本格的Bar「オーパ」があります。こちらには今年バーテンダーの大会で日本一になられた方がおられるとのことで、訪ねてみます。
オリジナルカクテルは『Spring Hill』と言います。モナンという洋梨シロップを使うことをまず決めまして、それに合うリキュールを試していったんです。それにさくらのリキュールを合わせてみようと思いつきました。色合いも春らしいピンクで、それにレモンジュースがたしてありますので、さわやかな飲み口になりました。1.戦後、将校を相手にしたのが…… ★まずは業界全体のことからお訊きします。ホテルのバーテンダーと酒場のバーテンダーは分野が違うと聞いたことがあるんですが・・・ まだまだ水商売という言葉が残ってしまうところがありますが、一概にバーと言ってもいろいろなタイプがあります。組織としては日本バーテンダー協会と、ホテルに所属している方だけが入れるホテルバーテンダー協会と二つあります。 ★大別すると二つあるということですか? 規模が全く違います。日本バーテンダー協会は世界バーテンダー協会に加盟していて一国に一つの組織です。ホテルバーテンダー協会はホテルに勤めている人だけになります。日本バーテンダー協会の中にもホテル支部というのはありますけど。 ★最近の業界の景気ってどうなのですか? あまり良くないと思います。特に銀座辺りの高級店ですと、以前のようには会社の経費で領収書が切れなくなっていますから。
カテゴリーが広いですから、総体的には何軒くらいあるんでしょうか。女性だけしかいないのにバーというところもありますし。ショットバーというと少し減るかもしれません。カクテルをやってるところに限ればもっと減るでしょう。 ★日本でバーが出来たのはいつ頃からですか? 時期的には戦後です。将校を相手したのが日本のバーの始まりと言われています。そのあとは、コンパというカウンターがあって、ボトルキープができてカクテル売る店が出来て、そんな感じの店ができるようになりました。 2.Spring Hill ★長野県のご出身で東京の大学に入られて、そして何故この業界に? ダイナックというサントリーの子会社でアルバイトをしていたんです。結果的にはその延長線上で社員として入社したんです。 ★若いころからこういうようなことをやりたいと思っていたんですか? う〜ん。学生時代はデザイナーの世界に進むつもりでしたから、夜間に服飾の勉強をしていたんです。どこでどう道が変わってしまったのか(笑)。 ★大学時代のバイト先が進路につながってしまうことって、結構あるんですよね。 そうです。ただ、私が20歳前くらいのときに、トム・クルーズの『カクテル』という映画を観たんですが、そのときからバーテンダーになりたいあこがれのようなものはあった気がします。 ★トム・クルーズ主演の『ハスラー2』がヒットして、10年に一度のビリヤードブームがやってきたと聞いたことがありますが、同様に『カクテル』が流行ってこの業界への影響ってあったのですかね? 小さなブームの波というのは時代的にはいくつかありましたよ。以前ですとサントリーさんがやっているトロピカルキャンペーンだとか。カクテルブームの第5次とも第6次ともいわれているのですが、缶入りや瓶入りのカクテルが出ましてブームになったこともあります。最近ですと、コンテストがあって少し認知されるようになりました。 ★水澤さんはお酒の種類にも詳しいと思いますが、専門はカクテルなんですか? お店によって人によっていろいろあると思うのですが、オーパはカクテルを大事にしていますのでそうなってしまいます。
そうです。それにオーパの社風と言えば仕事中にお酒は飲まないということもあります。飲むとどうしても感覚が変わってくるので、品質に不安が出てきます。 ★でもお客さんに薦められたら、邪険にも出来ないですよね。 そうです。初めから飲まなくても、途中から、12時過ぎてからとか。そういうやり方はあると思いますが、でも基本的には飲まないです。 ★夜は長いですから大変ですよね。ところで賞の話を少しお訊きしたいのですが、コンテストを受けることなったきっかけはなんですか? 業界全体の若手を育成する手段の一つとして、コンテストについて頑張りましょうって、奨励しているところがあるんですよ。 ★ものづくりっていうのは、若い頃は荒削りだけど、年をとってから洗練された感覚で作り出されていく部分もあると思うんですけど、カクテルもそうですか? そうです。でもある程度の年配になると、これはこういうものと考えが固まってきてしまうことはあります。ジンはこう使わなければいけないだとかウイスキーだったらこうするとか。コンテストというハードルを若いときに越えようとするということは、斬新な発想というか勉強というか、その過程は、若いからこそ大事とも言えます。 ただ、カクテルは「斬新で荒削りではない、完成したもの」をお客様にお出ししなければ失礼だと思っていますので、営業は営業、コンテストはコンテストで別物と考えてます。 ★どういう風に練習するんですか? 営業が終わったあとに練習に入るんですけど、それまでは全然コンテストのことわからないですから。どんなカクテルが印象に残るのか思い浮かべて、オーナーのアドバイスと、それから試飲とか組み合わせとかの連続です。 練習にはスタッフ全員が付き合ってくれます。まあ今回の賞は皆さんに助けていただいての賞です。 ★組みあわせって何種類くらいあるんですか? シロップやリキュールが200種類くらい。それをそれぞれに組み合わせての延々と続く世界です(笑)。 ★それは大変な努力ですね。優勝されたカクテルの名称はなんていうんですか? |
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