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下町の顔
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第28回
『情熱と努力・あられ100年』

<プロフィール>
地元両国中学より、慶應大学商学部へ。卒業後家業の東あられに従事。平成15年墨田区商店コンクールで区長賞と消費者賞をダブル受賞。趣味 ワイン、オペラ鑑賞、柔道(慶応大学柔道部顧問)。墨田区在住。昭和23年生まれ。
株式会社東あられ社長
小林 俊介さん

昔、下町にはたくさんの駄菓子屋さんがありました。店先の大きなガラスビンの中に入れられた、おせんべい。5円玉を握って、「ちょうだいな」とよく買いに行きました。生醤油の香り、バリッと歯で割る感触、大人にも子どもにも良く似合う米菓は、今でも日本人にぴったりのお菓子だと思います。
両国の駅から東西に伸びている北斎通りの中ほどにある『両国 東あられ』さんをお訪ねします。


1.おせんべいの発祥は草加
★あられ、おせんべいって、いつ頃からあるものですか?
お菓子の世界は、洋菓子、和菓子、米菓というジャンル分けが出来ますが、あられとおせんべいはお米で作ったお菓子、米菓の種類に入りますね。
あられはもち米から作りまして、おせんべいというのはご飯の時に食べるうるち米から作ります。
あられは平安時代に宮中で、お餅をついたのをあとであられにして食べたところが発祥ですね。おせんべいは草加せんべいが始まりで、日光東照宮に参勤交代で行きます大名に、草加の方が残ったご飯を焼いておせんべいにしてさしあげたのが始まりといわれています。

米で作ったあられは高級品でした
★おせんべいより、あられ、かきもちのほうが、歴史があるということですね。
歴史的にはそうですけど、東京に関してはおせんべいのほうが先ですね。あられ、かきもちもが関西から来たのは明治になってからですから。明治時代までは庶民はなかなかお米を食べれらない時代でしたから。

★あわとかひえとか食べていましたからね。
はい。ですからあられは宮中でとなりますし、米で作ったお菓子は高級なお菓子ということになりますね。
お菓子の世界も面白いですよ。沖縄ですと黒糖で作ったお菓子、九州でも甘いお菓子が多いですね。北海道は乳製品が多くて、お米で作ったあられおせんべいはそんなにはないですね。

★その後、明治から昭和へと特に変わりはなくきたのですか?
和菓子でも落雁などは日持ちしますが、お饅頭などは日持ちしませんので、お菓子の中で日持ちのいいものの代表があられおせんべいでしたね。昭和40年代くらいになってきますと、ケーキなどの生の洋菓子が増えてきましたね。その後コンビニにもチルドデザート、生関係が増えてきて、あられ、おせんべいに限らずビスケットなども含めてハード系統が沈滞しているのがここ十数年。それに宅配チルド便などが出てくると生物の流通もよくなりますから、私どもの業界としては危機感を持っている部分でもありますね。

★あられ、おせんべいの味も何日も置くと変わるんですか?
日持ちがするとは言え、鮮度は重要視ですね。おせんべいは生醤油の香りで食べるような出来立ての美味しさがありますね。私どものような自分のところで作って売るメーカーはまだまだ少ないと思いますが、東あられは生菓子と同じ感覚の鮮度を重視した製造販売ということになりますね。

★ということは、小林さんは比較的新しい発想をされてるということですね。業界全体ではどうなのですか?
生ものに押されてなかなか伸びていないですね。若い人が召し上がらないお菓子になって来ている。今の若い人はポテトチップからハンバーガー世代ですから、そういう人たちが私たちの顧客ターゲットである40代50代の人になられたときに、果たしてあられおせんべいを召し上がっていただけるのか……。若い人が味わってくださるような形や味付けはいろいろ研究していますけれどもね。

店内風景
★東京でおせんべいを製造している会社はどのくらいあるのですか?
組合に入っているところで160軒くらい。組合に入っていないメーカーさんもたくさんありますから全体ではどのくらいになるのでしょうね。昔はお米が統制品でしたから国から全農を通じて買っていたのですが、自由米になりましてから誰でも作れるようになりましたね。ですから、組合に加盟しないメーカーさんはたくさんあります。
でもスーパーやコンビニなどで寡占化されてきていますね。街の中のお菓子屋さんとなると、あられ、せんべいは最寄品ですから、わざわざ一駅二駅も離れたところに買いにいくわけはありませんからね。なかなかブランド力が出ないです。

★業界最大手というとやはり亀田製菓さんですか?
亀田さんのあられ、おせんべいは、テレビコマーシャルしながら、スーパーやコンビニに明治や森永と一緒に並びますね。おせんべいは、昔は、街中にお菓子屋さんがいっぱいあってビンとか缶とかの中に無造作に入れてあって、新聞紙で折った紙の中に一枚入れてもらったような菓子だったわけですよね。
それがコンビニが増えてくると、お客さんもテレビコマーシャルする商品に目や耳がなれていて安心してますから、結局寡占化してきてしまいます。

★小林さん自身は、それをどうおもわれますか?寂しいとか・・・
すごく寂しいですよ。なかなか、あられ、おせんべいでしっかりと毎日の売上が取れない。そうすると専門店になりきれなくて中途半端のますます悪いほうに行ってしまう。
門前仲町や、巣鴨とか帝釈天さん、それから浅草の仲見世、そういった門前町のお土産せんべい屋さんはしっかり商売をされていますけれどもね。

★そうですか。そういうふうに聞くと、おせんべいあられは下町の食べ物ですね。
山の手には少ないでしょうね。昔、栄えていた下町の商店街でも、今はシャッター通りがものすごく増えてきてしまっていますので、普通のあられ、せんべい屋さんも減ってきています。そういう意味でも寂しいですね。

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