下町の顔 | FACE |
|||
|
★業界の景気なんかはどうでしょうか。 景気に関する考えも僕はちょっと変わっていて、会社では景気の話は一切しないです。 僕は景気というのは単なる経済の指数を集めた平均だと思うのです。景気が良くなったからうちの商品が売れたというのなら、僕や社員の努力は何だったのだということになりますね。反対に景気が悪くなったからうちの商品が売れなくなった、景気に運命を任せているような考えはいやですね。 一人のお客さんの出会い、商品化。自分なりの脈絡。アンテナに引っかかってくるものを仕事としてやる。そして一度やったものはずっと長くしつこいくらいにやり続ける。30年くらい前に作った水泳の帽子とか未だに売れ続けています。今日も面白いことがあったのですよ。緑小学校でね、プールのことで東京都の取材に同行させてもらったの。そしたら年配のコーチの方が「フットマークの方ですか。お宅の水泳帽子、赤いのをもうかれこれ30年使っている」と言うんですよ。嬉しくってありがたかったですね。捨てることはいつでもできるのにね。売れ続けているのは嬉しいです。
う〜ん、なんだろうな。お客さんて、こういうものが欲しいと思っていてもその表現がせいぜい二つか三つを表すくらい。あとは私のほうがお客さんの話を聞いて、こういうものではないですか、そうそう、それだそれだって、形にしていく過程。それが一番の醍醐味でしょうかね。 ★今後はこういう開発をしていきたいって商品はありますか? 高齢者、障害を持った人、リュウマチの人とか乳がん切除の人とか、そういう方たちへの衣料品の開発。水と健康というのが今のテーマですね。社員と一緒に考えていきます。 僕は社長という感覚は全然持っていないですよ。僕一人でこの会社や仕事をしていては駄目だと思いますから。若い人が僕以上のことが出来る社風になるよう、ここ10年くらいはやってきています。お客さんの話を聞くことが上手な社員は何人もいますよ。僕は今、人をどう育てるかということが大変重要だと思っている。僕が交通事故で死んだらこの会社がおしまいでは困るもの。 ★例えばどんな風にですか? 寿司屋のオヤジさん方式ですね。仕入れて売って利益計算して、広告して。ただし一人だと効率が悪いので4.5人の寿司屋さんチーム(笑)。月次決算というものをやって、一人一人が社長ということですね。 ★それはいいですね。社員がいくつかのグループに所属するのですね。 9つのグループがあります。例えばスクールグループ、スポーツチェーン店、量販店、ヘルスケア、ダイレクトマーケティング、などね。それらのグループみんなで合同会議も開いて、自分がどこに所属したいかも公募を始めています。 今年の9月にはもう一つ発足します。フィール・アライナ。フィールは感じる、アライメントは、なじみがない言葉ですが、関節を正しい位置に意識させる、そういう意味ですね。
一つは膝が曲がりやすいように、歩行が楽になるようになど、一般の人向けのものですね。もう一つは競技別に、卓球、フェンシング、重量挙げなどの人たちのためのもの。関節が正しい位置に来るようにウェアが動くのですね。タイツのほうも姿勢よく正しく歩けるような、そんなウェアですね。 3.大きな努力で小さな成果 ★それではちょっと話題を変えて。昔はこのあたりってどんな感じでしたか? ここには昭和25年に越してきました。馬車通り(ばしゃどおり)って言うんですけどね。馬方が馬を引いて通る。材木を積んでいくのと空荷のと、馬車が通りましてね。馬糞が時々落ちてましてね。馬車にいたずらに乗りまして、馬方に怒られて逃げていくという遊びをしましたね。 ビー玉、パチンコ、メンコ、ベーゴマなんか加工して面白かったなぁ。遊びにはいろいろ工夫をしましたよ。メンコでも新しい遊び方はないかなとかね。新しいものを考えていましたね。世の中の人が右を向いていると、違うんじゃないかと左を向くような。世の中の習慣には疑問を持つことが多いような子どもでしたね。 ★小さいときから、なにか工夫するようなお子さんだったんですね。地域の中は変わりましたか? 人との交わりは少なくなりましたね。声をかける人もかけられる人も少なくなりました。 ★なんで声をかけなくなったんでしょうかね。 困らなくなったんじゃないんでしょうか。全体が裕福になったとか。大げさに言えば、昔は一緒に何かやっていかないと生きては行けないような、そんな風でしたからね。 ★では最後に座右の銘をおしえてください。 特にないですけど「本気」かな。後藤静香(ゴトウセイコウ)さんの一節ですが、本気でやれば誰かが助けてくれる、これはありますね。人生にそう何度もないですけど、ああこのことだったのかと思うことはありますよ。 あえて聞かれればもう一つは、座右の銘というより好きな言葉かな。「大きな努力で小さな成果」これは好きですね。普通は反対ですよね。労を少なくして益を大きくね。成果は小さくてもいいから努力は惜しまないで精一杯やる。目の前のニーズにきちんと応えてあげる。そういうことね。 全国シェアの50パーセント以上を誇る水泳帽子メーカーであり、また水泳に関連する健康・病気分野の介護用品を次々と開発していく第一線の会社であるフットマークさん。困って相談に訪れる目の前の人の要求にまず耳を傾けること、応えること。トップメーカーとしてなかなか出来ることではありません。社名どおりに業界に足跡を一歩一歩つけてこられた磯部さん。明日を見つめることが好きとおっしゃる磯部さん。静かな語り口でした。 |
||||||
フットマーク株式会社サイト http://www.footmark.co.jp | ||||||
※2004年6月収録 |
||||||
<<前のページへ |
|