下町の顔 | FACE |
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第19回 『駄菓子・寄り道・憩いの場』 |
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江戸みやげ屋たかはし 店主 高橋 信夫さん |
平成15年に半蔵門線が開通して、清洲橋通りと清澄通りの交差点に「清澄白河」の駅できました。街がちょっとにぎやかになった気がします。そこから徒歩一分のところに江戸資料館に入っていく入り口があります。ケヤキの大木が続く素敵な道です。その入り口のすぐ右側に「ちょんまげ姿」の人形が!下町の駄菓子屋さん兼お土産屋さんの高橋さんのお宅です。今日はこちらにお邪魔します。 1.人の優しさに支えられて ★表の人形は高橋さんにそっくりですね。お店の中も駄菓子がいっぱいでなつかしい風景ですね。いろいろ並んでいるので商品の話から伺います。これだけ駄菓子がおいてあると、土産物屋さんの要素を越えてしまいますね。 ええそうですけどね。今の子供さんって地域の中に寄り道して行く場所ってないでしょう。そういうところになりたい想いがあるんです。たとえばお金の計算ができない子がきて最初は100円持ってきて10円のものを持って帰ろうとするわけ。これ一個買ったら、これだけおつりなんだよ、っていうふれあいをしたいと思っているんです。
面倒くさいけどね。その間にいいもの買ってくれるかもしれない一般のお客さんがスーと行っちゃうわけでしょ。うちも生活がかかっているからね(笑)。だけど子供たちにやってあげるのは今しかないからね。 ★駄菓子屋さんって正直言ってどうですか?儲からないんじゃないですか? 儲からないよ。昔は4円や5円の儲けがあったらしいけれどね。今は1円や2円の儲け。子供が群がっていると儲かっているように見えるらしくて、辛いね。 でもね、夕方近くになってきたらこの辺りは子供たちでいっぱいで、それは嬉しいですよ。一般のお客さん来てもはじき出されて帰っちゃうくらい。500円600円のお客さん来れば50円60円の儲けがあるけどね、子供は1円2円でしょ。どっちがいいかって。誰が見ても大人のお客のほうでしょ。でもうちは欲張らないで子供でいいの。 ★もう何年やっているのですか? 18年です。初めの頃にうちで買っていってくれた子供たちが、もうじきその子供を連れてやってくるようになる。学校の先生が卒業させる気持ちと同じかなぁ。それが楽しみ。 ★このあたりだと明治小や深川小の子供たちが多いのですか? いや、いろいろ。大体8校くらいから来てるかなぁ。日本橋、月島、猿江方面などからもね。自転車で。自転車の止め方なんかもね、きちんとするようにしている。炭火で餅あぶったりもするのね、ここで。 自分たちで体験させる。溜まり場っていうと言葉悪いかもしれないけど子供たちが安心して寄ってくるところを目指してる(笑)。寄り道ばれたらって、子供は言うけど、あそこのおじさんが気持ち聞いてくれるから寄ったって言えばいいって、子どもには言ってるの。それがまた私たちの試練にもなるわけ。うちは実はお金では大変な思いをしているのよ。不渡りにあっているでしょ。負債かかえてのスタートだった。 ★不渡りの話はもうちょっと後で(笑)。色紙もたくさんありますね。テレビからの取材も多いですよね。 昔、かわらせんべいを作って販売するという企画があって、初めは取材に見えたんですね。区役所を通してね。産経さん、朝日さん、読売さんみんな来てくれましたね。 ★役所が地域のことでPRしたかったんですね、きっと。 軍配を作る指物師の中西さんという人が新大橋にいらっしゃるんだけど、その方に屋台を作ってもらったりもしたのね。みんなに助けてもらっている。出世払いでいいよって。ありがたいことです。
大阪で生まれて高卒で神戸のレース生地と下着の会社に就職したんです。四月に入社して八月に東京に転勤。昭和35年のことですね。15年勤めあげた頃に会社がおかしくなって在庫処分して売り歩いていた。疲れてちょっと煙草を吸っていたら課長が「お前らがそんなことしているからだ」と言った時にカチンと来てね。課長がちゃんと指示しないからだ、と言いたくなったけど、下っ端だから、謝って。でも悶々として結局やめさせてもらった。 昭和49年に独立。不況だったけど退職金100万円くれた。事務所も持てないから、会社の隅に椅子貰って、商品借代書いてもらって、売っては払ってね。そんな始まりだった。 でも、不渡りの巻き添え食ってしまって、何千万円の負債ができた。おまけに住んでいた家は道路陥没にあって。行くところなくて探していたら、たまたまここが空いていて貸してもらったんです。僕は染色をやったことがないんだけど、染色の仕事を廻してくれる 人がいて、しかも、1m8円でやるところを10円つけてくれて18円でやらせてくれた。ありがたかったよぉ。 ★ほぉー。 月末までやって精算して、それを換金して借金の返済をするの。夜中に染色して、寝ないでやって、昼間は仕事の整理。 ★周りの人が優しい人が多かった感じがしますね。人に与え続けると返るってくるということがあるでしょ。高橋さんが優しく人に接しているから。そんな感じがしますね。 いやいや、そんなことないよ。 ★どうしてお土産屋さんになったんですか? 資料館に来たお客さんに傘を貸したのね。お金を置いていくよって言われた。お金は喉から手が出るくらい欲しかった。でも使ってくださいって、一回しか使っていない傘あげたの。 そしたらそのお客さんがお土産屋さんやったらって言ってくれた。うち金ないもんって言ったら、繊維関係だったらハンカチとかあるじゃないって。そうかって。問屋さんに一枚一枚分けてもらって10柄くらい。染色や洗濯機なんかの横にそれを並べて置いたのね。 それが始まり。 |
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