下町の顔 | FACE |
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第10回 『露店商のまとめ役』 |
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東京都街商協同組合本深支部長
菱沼 達也さん |
「私、生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかい、姓は車、名は寅次郎、人呼んで、フーテンの寅と発します」。おなじみの渥美清さん演じる寅さんの口上です。 寅さんのように縁日などでお店を張る人を露店商(テキヤさん)と言います。今回はその元締めをされている菱沼さんを、高橋商店街の一角にあるご自宅にお訪ねしました。 1.縁日模様
昭和24年に東京都から外商組合という認可を貰ってからですから、東京都公認ということですね。現在13支部ありまして、本部は河童橋にあります。露店を立てるために道路を使うんで警察の許可証が要るんですね。最寄の警察で、写真入りの1年ごとに切り替える許可書をもらいます。私は本所深川の支部長で、それらの運営を組合としてまとめていっているわけです。 ★一つの縁日にはどのくらいの団体が入るんですか? 大体五団体くらい集まって縁日をやっていますね。許可証は私たちが代表して深川警察にお願いにいくんですがね。神社は私有地ですから許可証は要らないですけど、区道、都道、国道は要るんですね。9月1日の震災祈念堂の縁日は約230店舗くらい出ますが、あれは区道ですね。 ★実際にこの業界で働いている人は何人くらいですか? 本所深川で登録は70人くらいですがいわゆる社長が登録して社員は登録していないところもあるから。まあ、下町は人数的にも多いと思いますよ。縁日は昔は下町だけでしたものね。この高橋商店街も戦前から縁日やってますよ。縁日通りとも言いますのもね。 ★露店商というとテキヤさんですよね。テキヤさんという言葉は今は余り使わないのですか? 使いますよ。ちゃんと広辞苑にも載ってますから。露店商というのは最近の言葉ですよね。税金払うときにね、職種は露天商と書きます。テキヤはいわゆる隠語ですね。 ★テキヤさんというと、やっぱり縁日ですよね? テキヤさんにも職種がいっぱいあるわけですよね。今はですねぇ、食べ物が主流になってきましたが、昔は瀬戸物の叩き売りをしたり、怪我したところに塗れば治るという油の類なんかも売ってましたね。 ★そうですね。縁日は珍しいもがあって楽しかったですよね。文化ですね。いろいろ無くなっていくと少し寂しいですね? 瀬戸物の叩き売りというのはまだありますが、がまの油などは、ご存知かどうか知りませんが、油を塗るとほくろが取れるとか、深川の縁日でも昔、やってましたよ。「あなたほくろを取りましょう」、って。取るんじゃない。手にある。取ると穴が開く。我々の言葉でゴトシというのですが、いわゆるさくらで、さくらをやる商売もあったりして。昔からあるものだと、他には輪投げなんかはまだありますね。
フーテンの寅さんは映画見て分かると思いますけど神社のなかでやっていますよね。青森行っても北海道へ行っても神社の中は許可証はいらないですよ。寅さんはね(笑)。 例えば深川のお縁日は月3回ありますが、本所深川支部の露店商だけではなく、川崎の方からも大宮の方からも来る人がいますよ。そういう人たちは縁日の場合は1年間来る場所が決まっているから、あらかじめ東京都に判子を貰いに行って、所轄の警察にお金を払って個人の許可をもらう訳です。大きなお祭りになると大阪のほうからも来ますからね。 ★縁日に行列のできる店がありますよね。作る人によって上手下手はあるんですか? ありますね。普通の商店と一緒ですよ。作り方や味の工夫、皆さんしてますよ。深川のお不動様に水あめ屋のお姉ちゃんがいるでしょ。参道を入ってすぐ左側に。この人はもう小学校三年生くらいからやっていますね。親子三代くらいにわたって有名ですよ。 ★店を張る場所というのは売上に左右するんですか、どうやって場所を決めるんですか? 人間は大体は左側を歩くでしょ。縁日の流れも左から歩いていってから右から帰ってくるでしょ。行きはあまり買わないでしょ。神社に向かって右の方がいいわけですよ。帰りの道のほうが比較的売れますね。場所は我々が決めさせてもらいますね。長年の付き合いとか、横のつながりとか、組合への貢献度とかね。いろいろです。 ★フリーで縁日に店を張りたいという人にはどう対処するんですか? 縁日の場合は許可書がないと出店できないでしょ。だからうちで持っている場所を貸してあげることもありますね。 ★映画の観すぎかもしれませんが(笑)、フリーで来た人も師弟関係になるんですか? 親方とか弟子とか、親分とか子分とか今でもありますよ。映画ほど深い関係ではありませんがね(笑)親分は親分の分があって、子分には子分の分があって、親分よりいい場所では店は出させてもらえないですよ(笑)。 |
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