下町の顔 | FACE |
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第9回 『桃太郎昔話を世界へ』 |
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日本桃太郎の会 会長
小久保 桃江さん |
3月に半蔵門線が開通して、大江戸線と二つのラインを持つことになった『清澄白河』の駅。そのすぐ上のマンションの8階に桃太郎資料館があります。館長は今年で100歳の小久保桃江さん。児童文学の立場に立って桃太郎伝説を追及してきた小久保さんが生涯の大半をかけたその集大成が展示されている、とのこと。 壮大なロマン……どんなお話になるでしょうか。胸をわくわくさせて訪ねました。 1.貧困の中で少年が考えた5つの幸せ ★何故桃太郎の研究を始めようと思ったのですか?
私が小さい頃、日本では10年ごとに戦争をしていました。日清戦争、日露戦争。私の3つ4つのとき。とにかく子供のときには良くわからなかったが、軍艦、大砲買わねば戦争できないでしょ。戦争すれば借金がたまるわけですよ。農村は税金を押し付けられてどうしようもない。だから娘を女郎に売る。結核になるのが分かっていても娘を紡績女工に出す。そういうことがあったので、人間はどうしてこう苦労をしなければならないのか、と私は10歳の頃から考えていましたね。 小学校で読み方の時間に本を前に立てて、自分でどうしたらみんなが幸せになるかを考えて、本の陰で思いついたことを書くんですよ。それでどれだけ先生から拳骨を食らったか分かりません(笑)。それでもずっとそれを考え続けまして、25年かかって35歳の年に五つの幸せの原点を発見したんです。 そのことを子どもたちに優しく教えるために童話にしようと思って作ろうとしたが、なかなかいい童話ができない。それでずるく考えて既成童話の中にないかと思って探したら、桃太郎童話の中にぴったりあったんです。その五つが。 ★五つの幸せとはなんですか? 智、仁、勇、健康、富と言うてね、智は知能が発達している猿、仁は忠誠心のある犬、勇は勇敢で行動力のある雉です。 ★健康と富は桃太郎の話の中ではどこから来ていますか? それはね。今まで学者は本に書いても口で言うても、桃太郎の話は智仁勇でありますと言うたものです。それだけ言えば世間の人は満足したんです。ところが私は満足できません。60年研究してみて、桃太郎の話というのは、きび団子があったからこそ家来になったのでしょう。そうすると富が大事でしょう。 ★富がきび団子ですね? そうでしょう。大きく言えばこれは物的資源です。健康は人的資源です。健康は元気な桃太郎ですね。そしてこれが政治経済の原点になっております。
桃太郎のもとは仏教から出ているんですよ。仏教のもとはお釈迦様の悟りから出ている。お釈迦様が発見した大原理を仏の教えにして曼荼羅(まんだら)を説明しやすいように動物の名前をつけたりしたんです。桃太郎童話は東洋思想の原点。世界最高の児童文学です。日本の宝であり世界の宝であります。こうした宝を日本だけで持っていてはいけないので世界の人に教える必要があるんです。 ★世界に桃太郎の話を広めていくために「桃太郎の会」という会があるそうですね。会はどのような活動をしていますか? 県単位のサミットをしています。東京、犬山、岡山、奈良でやって、今度はアジア大会、世界大会を計画しています。世界民族の繁栄平和の基礎が智、仁、勇、健康、富だからね。 ★サミットではどんなことをするのですか? 皆さんの生活に応用してもらうために五つの原理をお話しています。犬山の市長さんは政治に桃太郎を利用したいと。奈良大学の先生は教育に利用したい、とサミットでお話になりましたよ。やっと方向性が見つかったと思いますね。 ★何人くらい集まりますか? そうですね。100人から300人くらいですね。場所によって違いますが。新聞やNHK、衛星放送も取材されていろいろ出ていますよ。 |
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