下町の顔 | FACE |
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★宣伝活動はしますか? やらないですね。取材も受けない。今、全部そういう風にしてる、今回、取材を受けたのは特別(笑)。 ★何故取材を受けないのですか? 時間かかりますよね。それなのにテレビなど映って何秒の世界。でも収録に時間がかかる。宣伝をしたいのなら『切子』の番組作ってそちらでやってください、って。それでいい。 ★先代は宣伝をやっていたんですか? そうですね。まあそのおかげでどんどん広がっていって仕事があった。で、宣伝を切っちゃえばそれだけ仕事量が減る。そうするとまた違う意味で作業ができるんで、そっちのほうで楽しもうかなと。
★先代とはそこら辺が違うわけですね? 多分、先代もやりたかったと思います。やりたかったんだけど、仕事もどんどん来るから。日曜日でも仕事をしていましたからね ★三代目は? 流れに乗って(笑)。 2.伝統を守りつつも…… ★ところで仕事がなくなっちゃたらどうしますか? なくなったらまた違うところで話を進めればいい訳ですから、この問屋がだめになったら違うところに行けばいい。もしその問屋がなくなれば自販すればいい。それもだめだったらカルチャー教室を作ればいい。段々的に。 ★お父さんとの思い出で印象深いことはありますか? 私は単車が好きなので、カワサキの400ccに乗ってました。ずっと走り回っていた。夜遅くまで。いい年だしお前社長になったんだから、怪我したらお前が抱えている職人さんお前の下にいる外注さん、お前が事故を起こして仕事を中断したらみんな仕事が止まるんだぞと、お前だけ楽しくっても怪我したら周りが大変だからやめろと言われましたね。で、実際に単車で走るのは辞めてラジコンに。レースはやらないですね。サーキットにはいきますけど。よいードンっていうのはやったら多分仕事にならないと思う。好きですからね。乗り物、車、動くものが好きです。今四駆に替え、車もがんがんやって何台か潰したかな。はい。 ★お父さんに聞いておけばよかったかなぁということはありますか? いっぱいありますね。この仕事はどうやったら能率が上がるんだろうか……と。自分で考えればいいことなんだけど。こういうデザインをやったからどう?という相談はもうできないですね。今はお袋、妹が絡んでいないと意見を言ってくれる人は少ないですね。 ★お父さんと比べてどうですか? まだまだですね。仕事の量が全然違う。ずっと仕事をしていることが好きな父でしたが、私は仕事をしながら違うことを考えていますから。 ★お父さんの、これだけは受けついでいこうというものありますか? 受け継いでいくということよりも、同じことをやっていては勝てないし。賭けですね。動物シリーズをやるのもそれかもしれない。同じものやったらうちの親父に負けるから、自分はまだオヤジと同じ土俵にも立っていないです。 ★切子のラインなど、先代のやられたものと今の大友さんがなさったものと違うわけですか? 全然違いますよ。パターンは一緒ですが入れる人によってぜんぜん違う。手の入れ方によって違います。見るとすぐ分かります。感覚的というのでしょうかね。斜めの線でも、そっくり返してやる人と、まろやかな人とか、片方が立って入る人とか、微妙に違いますね。手触り、動かす時でも、持ちかえて一回廻す人、一息にいく人などがあるから仕上がりも違ってきてしまう。アッこの人がやったんだねって分かりますね。 ★江戸切子を通じて、大友さんにとって下町とはどういうものですか? 生まれたところって感じですね。愛着?有りますよ。この中で育ったからね。邪魔されないから。。このあたりは下町の色濃いですから昔風のところってんで、撮影もまだ来ますよ。向こう三軒両隣って程の密着ってことはないけど。
★ところでこの業界の景気はどうですか? 一番悪いですよ、今。仕事ないところ一杯あります。 ★伝統でもですか? 全体的に考えるとだいぶ落っこちてますよ。来年なんかもっと危ないだろうと話し出てますから。何でもやりますよっていっておかないと仕事は来ない。建築関係、照明シャンデリァも。うちはプラスチックにカットしてそれの艶出しもやってますから、今これをやっているところはどこにもないですから。只、今、需要がないから仕事がないだけですけど。昔は家庭でもガラスからプラスチックに移行しましたよね。あの時の見本切りとか型作りとかやってましたね。うちのおじいさんのときは照明関係は強かった。今建築がだめになってホテル関係の改築もないですしね。 ★伝統の世界も大変なんですね。江戸切子はこれからどうなっていくと思いますか? 作家さんが多くて職人さんが減るという逆転現象になるでしょうね。習う人がいなくなる。跡を継いでくれる息子がいるところが残る。残るものはそれなりの考えを持っているところ技術も。職人さんでも募集する必要はなくて自分で飛び込んでくる人を待つ。やる気をはっきり見せてもらえる人でないと。 ★将来どのような大友さんがいらっしゃるのでしょうね。伝統的と遊びとの比重は? どうなってるんでしょうね僕は(笑)多分遊びの部分のほうが多いかな(笑)幾何学が切子だと思っている人はそれでいいし、切子でも絵と思っている人はそれでいい。決め方はない。これ一本で行くより斜めでいろいろなものを突き刺してもらっていちゃったほうがいいじゃないですか。だからいろいろなことやってます。 3.座右の銘 ★では最後に座右の銘を教えてください? 『成るようになる』じゃないですかね。自分がいいと思えばそれで通したほうが、人に左右されるよりは自分でこう思うと思ったほうへ行ったほうが面白いです。後悔したくないということ。後悔ならやった上で後悔したほうがいい。とりあえず何でもやってみる。それから考えればいい。行き詰まったら詰まったままに進んでいけば、時間が解決してくれると思うし。 ―――――――――――― 「好きなものを作っているんですよ。ふとアイディアが浮かぶとね、ちょっと他所向いて遊んでみる。どのくらい削ったらどうなるかと、ね」。話しながら楽しそうに目が動く。芸術家の目と職人の腕、両方がきちんとそろって伝統が継続されていく江戸切子の世界。時代に残っていく確かな手ごたえが、すでに三代目にしっかりと受け継がれているような気がした。 ※2002年11月収録 |
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