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下町の顔
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第4回
『江戸切子の若き革命児』

<プロフィール>
高校卒業後、先代・大友初次郎氏、父・大友精三氏につき江戸切子の道に入る。グラビール彫刻の第1人者、青野武市氏に師事。今日まで新宿・京王百貨店、銀座・松屋にて開催される数多くのグループ展・クラフト展などに意欲的に参加する。2001・2002年 亀戸・ギャラリー凜にて個展を開く。
東京都亀戸出身。江東区在住。昭和43年生。
江戸切子職人
大友 健司さん

魚子(ななこ)、麻の葉、六角篭目などの伝統的な模様を持つ江戸切子。
その歴史は1834年、大伝馬町のビィドロ屋 加賀屋九兵衛が金剛砂を用いてガラスの表面に彫刻をしたのが始まりと言われています。明治時代になって江戸時代の面影をとどめた意匠として、『江戸切子』の名称となります。その後、大正時代にはガラス素地の研究が進み、研磨の技法なども開発されて『江戸切子』は伝統ある芸術品として花開いていきます。現在、東京都の伝統工芸に指定。
亀戸の大通りから細い路地に分け入って歩くこと数分、舗装道路が途切れて砂利道がまだ残っている絵になる下町風景の中の、大友さん宅をお訪ねしました。

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1.切子の世界
★切子には江戸切子と薩摩切子があるようですが、どのように違うのですか?
江戸でやっているから江戸切子、薩摩でやっているから薩摩切子ですけど、地名から来る名称の違いのほかに、厳密に言うと昔は透きガラスが江戸切子で色がついているのが薩摩切子と分かれていましたね。薩摩はラインが太くて色が濃いという特色もあります。薩摩切子は薬瓶に使われるために作られたものですからね。
干支シリーズ・うさぎ

★江戸切子は江東区にしかないんですか?
もともとは墨田区のタキナミグラスさんとか、あの近辺でやっていた親方さんたちがこの亀戸で独立したものですね。その二代目が大島や、砂町に多いです。うちのおじいさんも戦争で家が焼けちゃってタキナミグラスさんの工場借りてやっていたんです。こっち建てるまでは。

★幾何学模様ばかりではなく、今は絵もありますね。それらも江戸切子というのですか?
そうですよ。皆、江戸でやっていれば江戸切子ですから、そういうアバウトな世界。うちの先代の社長も、『別にこれは違うあれは違うと選別することはない、東京で皆やってんだから、ひっくるめて江戸切子って言えば済む』って言ってました。絵切子……風景を彫ったものだけど、中にはそのような名称で出している人もいますよ。

★そういうのは江戸切子の新進作家っていうのですか?
お客さんが見ないでそういうのを売ってると新進になるの?皆が見てくれるから、それが普通だってことなるのかなぁ。昔からずっとやっているんだけど、お客さんの目に見えたかどうかってことだから、何を新進というかてことにもなるし。昔からあるんですよ。ただやる人が少ないっていうだけであって。皆と同じ事やっていても面白くないから、自分もやりましょうかと。

★大友さんの動物シリーズのウサギは反響がいいですね。どうしてウサギを?
製作がちょうどウサギ年だったんでね。ウサギから。干支シリーズですね。お馬さん、三越の通販でやっている羊さん、辰は大変なんで竜の落とし子という形でやった。蛇は南天をいれて、それがもう5種類そろいましたね。

★新しい世界を切り開いたということですか?
新しい世界ではなくて自分的には遊んでいるということですかね。通常でやっているのは幾何学模様ですが、動物で動きのあるのとか、見て面白いのとか、アッかわいいなぁっていってもらえる遊び心ですね。自分も楽しめる。

★伝統的な中から革新的なものを作っていこうという意思はあるのですか?
ないです。思いついてやりたいなぁと思ったことをやっているだけです。

★幾何学模様とか新しいものとかの比重は?
比重は特に無いですね。ラインの問題。問屋さんのラインは昔からのものを求めていますけど、展示して売れる場所に出すものは遊びと、それから凝る仕事もできますね。
親子三代の切子職人

★遊びの部分は楽しいですよね。そろえるほうも楽しいですね。干支シリーズのほかに動物はあるんですか?
楽しいですよ。仕事としては全く同じ工程をしてますが、多分仕事じゃない(笑)。鈴虫で3日かかりました。普通のは一日12個とか多くできれば24個のロットです。でも鈴虫は3日に一個しかできない。トンボでも一日半はかかる。図面から落っことしてしてやっていくから。これは(トンボの絵のグラスを手に取りながら)人に見るせて『気持ち悪い〜!』って言われるといい思って作ったんです。仕上がってまずうちの働いている人たちに見せたら、『これリアルすぎて気持ち悪いですよね』と言われたので、あっラッキーと思った。昆虫はリアルにやるほど気持ち悪くなるから、それが出たということは成功に近づいているということになりますからね。

★芸術家肌の仕事の域ですね。生活の糧とのジレンマはありますか?
とりあえずやって、これ見せてどうだって感じですね。気に入らなかったらまた作る。

★自分で創作意欲をかきたてられますか?
もしトンボだったらトンボやってくれと。それをここまで細かくやるかデフォルメして。簡単にトンボらしく見せるとかやりますけど。ただ問屋さんの要望でここまで凝るとお金が高くなる。一日半かかればそこまで計算すれば相当の値段になってしまう。で、それをいかに簡単にトンボが飛んでいるという感じに見せる。そっちのほうで大変だけどそっちのほうが面白いですよね。

★干支シリーズやトンボなどで、もし食べていかれれるんだったらこういうほうがいいですか?
まあ要はそうですね。うちは見本切ってそれを流して伝票代って。収入は入ってうちの職人さんたちはそのラインの仕事やって、私は私の独自の仕事……、というのが一番理想なんですわ。うちのお爺さんと親父はもう亡くなってます。

★親子三代というと作品について考え方の食い違いとか、確執とか、大変なこととかあったのではありませんか?
確執?ないです。うちで仕事しているのは昔からので、それは問屋ルートでちゃんとやればいいわけですから。それ以外で私が展示販売できる場とか、京王ギャラリーグループでやったときなどに出せばいいですから。別にそんなことで確執になることもないですよ。元は一緒だし。

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