下町の顔 | FACE |
|||
|
第3回 『Jリーグマークのデザイナー』 |
|
||||
グラフィックデザイナー・古美術商
斎藤 靖彦さん |
森下4丁目の細い路地を入る。 『Jリーグのチームマークを作ったデザイナー』というイメージで斎藤さんを訪ねて、戸口を開けてびっくりした。古美術の世界が広がってお香の香りが静かにゆらめいている……。固唾をのんで立ちすくんでいると、斎藤さんが出てきて「奥にどうぞ」と陶磁器や仏画の間を通って壁一つ裏に招かれた。数台のパソコン、画材に囲まれた細長い、こちらはまぎれもない仕事部屋。斎藤さんが手がけたキャラクターグッズや化粧品が無造作に置かれていた。グラフィックデザイナーと古美術商というふたつの仕事をもちながら、お互いの共通性やものづくりについて語ってもらいました。 ――――――――――――
1.月、日、星 ★Jリーグのチームマークをデザインされた方が下町にいらっしゃるということでお訪ねしたんですが、まず何故デザイナーになられたのですか? それしかとり得がないからかな(笑)。小さい頃から画家になりたくて、美大受験では彫刻科を希望していたのですが途中からグラフィックデザイン科に変えました。当時は花形でしたからね。 ★そうですか。Jリーグチームマーク作りでは何かひらめきがありましたか? 僕はあまりひらめきはないです。いくつかのチームのものを作ったのですが、例えばジュピロ磐田の場合、どうしようかなって思って、磐田市の特産は何って聞いても皆知らないのね。だから僕独自で調べて、県の鳥が三光鳥だから、月、日,星って鳴くから、それを取り入れて。 ★どのくらいかかるものなんですか? ものによっては半年くらいかかってしまうのもありましたね。ラフ(注:下描き)を10いくつも作ってそこから選んでいくから。 ★愛着あるでしょうね。Jリーグをメディアで観るとどんな風に感じますか? ちょっと恥ずかしいです。 ★商品デザインを主にされているということですが、ヒット商品はありますか? たとえばだいぶ前になりますが、マスコット付きのボールペンがあります。「ペンヌーボ」という商品ですが。かなり売れて会社から『社長賞』というものをいただきました。
★これは面白いと思う商品はありますか? 紙時計ですね。『ガッタウオッチ』という商品名で、絵をパリパリっとめくってグリットで止めるんです。値段は480円でした。数10種類ありますね。国内・海外共に売れて、デザインオブイヤー賞もいただきました。他にジョーズキャップというサメの形をしたスイミングキャップで、真面目にくだらない商品を作ったのですが、これはドイツの面白グッズを集めた博物館に入りました。館長が頭にかぶっている写真が向うの新聞に掲載されて笑えましたね。僕も商品企画会議でかぶって説明しましたけど、社長の前でね(笑)。 ★デザイナーとしての苦労はありますか? 常に限界が見える。商業デザイナーの分野では商品に携わるデザインの評価は売上げですから、そこに芸術性というものはないような気がしましたね。 ★会社に勤めていた頃はどんな社員でしたか? 普段の勤務態度が悪かったんです。きちんきちんと会社に出て「さあアイデア出すぞ」なんてことはしてなかった。で、売上げや賞を取れたことによって、ある程度その自由感が必要なんだなってことを会社が解ってってくれた様な気がしたのは、良かったかな。 ★作成中にこれはいけるんじゃないか、という予感はありますか? アイディアはいつも出ている。搾り出した一点ではなく、もっと沢山ね。商品化したいアイディアがいっぱいあって、惜しいなって思ったものもあった。でも会社はマーケティングや統計を重要視して会議で決めていく。こちらからの熱意が必要です。 |
||||||
|