下町の顔 | FACE |
|||
|
2.香取神社とは・・・ ★香取神社さんの成り立ちはどのようなものですか? 藤原鎌足が東国下向中、この亀の形をした島に舟を寄せて御幣を刺して千葉県佐原にある香取の大神様をお招きして自分の大切にしていた刀を奉納し戦勝祈願をしたんですね。665年のことです。神主はかつては国家管理だったんですね。ですから境内地も国のもの。今の三倍くらいの境内地が昔はありました。
940年平将門の乱の時に、藤原秀郷がおこもりして祈り、平将門を打ち破りました。そのとき使っていた、弓と矢を持ってお礼参りに来て奉納されました。勝った戦ですから、勝矢(かちや)と言います。ちなみに他の神社では御神矢、お寺さんでは破魔矢と言いますね。勝矢は凱旋の模様を現代に再現しています。戦いの装束をつけて愛宕神社(亀出神社)から新大橋通り、そして明治通りをずっとパレードをします。稚児行列や幼稚園児鼓笛隊少年剣士なども花を添えます。私は本殿で出陣のお祓いをして、凱旋後に弓と矢が奉納されるため神社で待ちます。勝矢は残念ながら現存してません。香取神社の経津主神(ふつぬしのかみ)様は戦の神様ですね。武道修養の人たちは必ずお祀りしたんです。今は相手との戦い自分との戦いという意味で、スポーツの神様としてうたっています。 ★こんにゃく神輿も有名なお祭りですね。 神輿好きの人が手弁当で造りに来て、明治11年頃に完成したといわれています。3構造で屋根と胴体と台座と別々に動くんです。しかも四方八方に自由に揺れるんです。見物人は壊れる!って叫んだそうですよ。黒い古い神輿のほうが特にね。 3.宮司の仕事と生活、そして将来のこと・・・ ★宮司さんになられたいきさつを教えてください。 私は市川の本八幡で生まれて大学の3年までいました。こちらには子供の頃お祭りのたびに母に連れられて手伝いに来ていました。神主は本来世襲制ではないですが親子で継いで行かないとなり手がない。神社数に対して神主数は4分の一くらいですかね。全国的に少ないです。 ★すんなり継がれましたか? 小学生の頃にいやだと言ったらしいんですけどね。高校は神主大学と言われている国学院付属。それでレールは引かれて、乗っけらて走ちゃったみたいなところがありますね(笑)。もし継がなかったら野球選手になりたかったですね。 ★宮司さんの生活の流れとか決まりとかはありますか? 6時頃起床。境内の掃除をしてからお日供(おにっく)と呼ばれるご奉仕を365日欠かさず。お米、お酒、お塩、お水、基本的にはこの4点をお供えします。氏子さんの安全祈願して大祓いを学生と一緒にします。そして、お願いをされた御祈祷をします。学生さんというのは住み込んでいて我々と一緒にお宮参りや地鎮祭を覚えて資格を取る人ですね。大学から学生を預かって資格を取らせて故郷へお返しする、そういった制度を考え出したのはうちの祖父です。授業料銭湯代お小遣いは神社で負担しています。昼間は神社に参拝の人がいらっしゃると神社のご由緒などの説明もします。 ★神殿の奥でお祓いをされている姿などを見ると、神道は美しいですね。袴の色分けはどのような意味がありますか? いわゆる本採用でない方が白、本採用が水色。その上が紫、さらにその上は紫に八藤の紋が付きます。紋も縦糸横糸の関係で八藤に濃淡が出ますね。紋がはっきりしているほど上級ということになります。そのほかに神職には階位があるんです。浄階、明階、正階、権正階、直階と言います。その一字を取りますと浄明正直という例祭の祝詞(のりと)の中には必ず出る単語になります。はかまの色との組み合わせもありますよ。
せがれが高校で陸上をやっていたんで、陸上の父母会の会長をしています。せがれは卒業をしたのですが親のほうが抜けられなくていろいろなところに応援に行きます。それが私のストレス解消法ですかね。大声で応援しますから。俗に言う都大路を走るという大会ですね。 ★その息子さんは香取神社を継がれますか? 継いでもらえそうですね(笑)。21歳ですが、もう禰宜(神官の役職名のひとつ)に登録をしています。今後は息子が新しいビジョンで……行くといいんですがね(笑)。 ★地域との密着性において今後、神社はどんな形であればいいと思われますか? それは『親しみやすい神社』ですね。私も地域に積極的に出て行く。現在、亀が井戸という井戸を掘っているのですが、皆さんのおかげで来年の3月頃に完成するので楽しみですね。この下町は親しい人の集まりという感じがしてなりませんね。今、氏子区域が分からない方も多くなっていますから、神社の責任ということもありまして折り込み広告を入れたり、ポスターを氏子さんに配ったり町会に貼っていただいたりしています。 ★神社経営もビジネスですかね。 神様に仕えるからそうではないといいますが、これからはそうでしょうね。 ★最後になりましたが、香取さんの座右の銘は何でしょうか? 『不易流行』です。芭蕉一門の俳風を語った「不易流行其基一也」からですがこの言葉が好きですね。不易とは時を越えた真理、流行とは時代や環境のさまざまな変化ですね。これらの基は一つですが神社も時代によって変わってもいいが変わってはいけないものもあると考えます。 ★新しいビジョンを取り入れながらなおかつ古来からの神道を守りとおしていくということですね。本日はどうもありがとうございました。 ※2002年8月収録 |
||||
<<前のページへ |
|