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下町音楽夜話

◆第642曲◆ 日本武道館のボストン(2)


2014.10.11

先週に引き続き、ボストンのライヴについての話題である。10月2日に日本武道館で始まり4日が名古屋、6日が大阪、そして9日が再び東京に戻って武道館である。随分余裕のあるスケジュールに感じたので、これは追加公演の機会を窺っているのかと思いきや、追加もなし、のんびり日本滞在を楽しんでいるということか…。エンジニアだったら当然そうなるかという気もしないではない。日本はものづくりに関しては、やはり世界でもトップクラスの面白い国だろう。ある程度コネクションがないとそうそう面白い経験もできないだろうが、UDOなら上手くやるかもしれない。

さて今週も木曜日には武道館へ行ってきたわけだが、今回はつれあいと一緒である。ハードでポップなものが好きな人なので、ボストンは当然ながら許容範囲となるわけだが、如何せん忙しい人間なので誘うのも気が引ける。それでも何とか都合をつけて行くことができたのは有り難かった。何せ演奏も含め、何もかもがハイ・クオリティのライヴだと分かっているだけに、見逃す手はない。古いロックが好きであれば、一緒に手拍子を打ちながら観ることができるライヴは楽しいに決まっているではないか。やっている方も、観客が確実に喜んで手拍子を打ってノッてくれる曲がいくつかあるのはやり易いだろう。「モア・ザン・ア・フィーリング」と「ロング・タイム」のノリはもう爆発的なもので、その場に居ることの心地よさを満喫することができる。ライヴの楽しさの極みといったところだ。

それにしても、先週と全く同じセットリストであろうことは何となく予測できたが、トム・シュルツに関しては手癖なのか、音のヨレるところまで同じだったり、コメントまで同じなのは笑ってしまうほどのレベルであった。「あなたは機械になりたかったのか」と言いたくなるほどだ。他のメンバーはそこまでいかないが、実に上手い連中であることは知れていたし、修正すべきところは修正してきたといった印象だ。ヴォーカルのトミー・デカーロはハードな曲ほど声がよく出るようで、バラードは苦手というわけでもなかろうが、若干不安定になるところがあったが、今週のステージのほうが調子はよかった。また座席でそこまで違いが出るとは思えないのだが、ドラムスの音の抜けに関しては前回のほうが圧倒的によく、今週のステージの前半は、ドラムスの音に少々不満を感じながら観ることになってしまった。

ライヴの印象は、意外なところで左右されるのかと思わなくもない。今回、2度観たボストンのステージは、斯様に再現性を重視するものだったが、印象がまったく違うのである。1回目はこちらも観察眼で観ていたのかもしれないが、周囲の観客が大人しく、冷静に観ることができたのだ。2回目は異様にノリのいい連中に囲まれてしまい、ライヴ自体がノリノリだったような印象すらを持っている。自分の右隣りは、自分と同年代かと思われる、いかにも50代のサラリーマン然とした2人組だったが、心底楽しんでいるようだった。やはり年齢から想像はつくが、ファースト・アルバムの曲になると、もう泣き出しそうなほど盛り上がっていた。汗を拭き拭き一緒に歌い、興奮の極みといった様が微笑ましくもあった。古いロックは、昔の懐メロ的な要素も加味されて、オジサンたちが謳歌した青春時代のアンセムのようになっているのだろうか。ボストンの曲が好きだったことは、ラッキーでもあったろう。パンクではあのようには盛り上がれまい。ジジイになったパンク・ロッカー達はどうしているのやら。人生を踏み外してなければいいが…。

「ヘヴン・オン・アース・ツアー」と言っておきながら「ヘヴン・オン・アース」もやらない古いアルバム重視のセットリストは、かなり年齢のいっている観客にとっては有り難いものだったのだろう。4枚目、5枚目の曲もほとんどない。終盤の確実に受けるであろう「フォープレイ〜ロング・タイム」の前にやった4枚目のタイトル曲「ウォーク・オン」は、ゲストに「アメリカン・アイドル」のファイナリスト、シボーン・マグナスというオネエサンを迎えて、オルガン・ソロも挟みながらかなり長尺の演奏を聴かせたが、あれは要らなかったようにも思う。どう考えても盛り上がる曲ではない。冷静に振り返ると、実にバランスの悪いセットリストなのだ。セットリスト・サイトで見る限り固定的なもののようで、ニュー・アルバムの曲は時々入れ替えつつほとんどやらないようだ。いずれにせよ、トム・シュルツのご意向ではあろうが、意外なほど上手く、意外なほどハード&ヘヴィーで、そして意外なほどサービス精神旺盛な、楽しいライヴであったことは間違いない。さて、次のアルバム・リリースは有り得るのだろうか。…厳しいかな。


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