あけましておめでとうございます
本年も『散歩の絵っせんす』をどうぞよろしくお願いします
< 菅野たみお・SORA> |
お正月なので七福神めぐりをしようと検索をしたら、おお〜たくさんありました。
隅田川七福神、深川七福神、日本橋七福神、谷中七福神、下谷七福神、浅草七福神、亀戸七福神、柴又七福神、新宿、青山、池上、江戸川ライン、板橋などなど。それぞれ神社だけでめぐるものから寺院がまざったもの、それからお不動様がはいっているもの、それに恵比寿さんや弁財天さんが2社ずつ入って9社を回れる日本橋七福神のようなコースもありました。
今日のコースはJR総武線・亀戸線、または都バスの『亀戸駅』を起点に徒歩で3時間コースです。七福神の御開帳は元旦から7日までです。
★まずは"亀戸"&"七福神" その由来、SORA的独断的寄せ集め的考察
浅草(浅草海苔でおなじみ。海辺だった)・押上(潮が押し上げてくる)・曳舟(船がつながれているところ)・柳島・京島・寺島・大島……陸から浜辺にさらに海に浮かぶ島にという道のりがわかるような地名がこの辺りには残っています。亀戸も始めは亀ノ島または亀津島と呼ばれた亀の形に良く似た島でした。陸と島とが次第につながり、人が住み始めて耕地もできて村が形成されて亀村と言われるようになりました。やがてこの地にあった亀ヶ井という湧水が有名になったことから、亀村と亀ヶ井が混ざって「亀井戸村」となり、さらに江戸時代になると「井」がなくなって亀戸村へ、そして現在の亀戸になったということです。
では七福神めぐりはどのような理由で始まったのでしょうか。
ちょっと前置きが長くなりますが、我慢してくださいませね。
七福神さんたちは出自が様々です。福禄寿さんと寿老人さんはおなじ神様で中国の道教に発しています。老子が仙人になった姿とも言われています。幸福と禄(財産)と寿(長生き)を表しています。恵比寿さんはいざなぎのみことといざなみのみことの第3子と言われていて日本の神様。島国日本においては海の幸をもたらす信仰の象徴です。弁財天さんはインドのヒンズー教の神様でインダス川を神格化した水の神様ですが、仏教に取り入れられた頃から人に対して無碍弁才(むげべんざい)を授けて福知を与え、そればかりか愛嬌・縁結び、おまけに人の汚れを払い音楽の神と雄弁の神、子孫を恵む神とも言われ、女性ながら天晴れなオールマイティの神様です。
毘沙門天さんはもともとインドの南に浮かぶ島スリランカの神様で、悪をくじく勇気をそなえる戦神(軍神)で憤怒の形相です。清く正しく強く生きることをさとす神様と言われています。大黒天さんは一般的には豊穣の神様と言われて、米俵や打ち出の小槌、肩に大きな金の袋をかけていますが、七福神さんの中では一番に紆余曲折な諸説ある神様です。
もともとはインドのヒンズー教の神様でマハーカーラ(大いなる黒い)と呼ばれて夜叉神という怖い神様でした。しかし7世紀の頃からインドでも大黒さんの扱い方に変化がみられ、厨房に座して食べ物などを前に並べられていた時代もあります。中国にもこのような形で伝わり、さらにこの神様を日本に輸入した最澄もしくば空海さんが天台宗、真言宗の守護神としてあがめ、その一方で、神社の下級神人が大黒さんの装束をして、五穀豊穣・招福開運を祈りながらお正月に家々の門口に立って祝詞を述べてお米やお金を貰い受けるという事をしたために、現在のように全国津々浦々に今の大黒さんの形が行き渡ったといわれています。
また大黒と大国(おおくに)の読みが一緒であることから、大国の命(オオクニノミコト)として日本人の身近な民間信仰的な存在となったようです。最初の神様像から思いもよらないアレンジが日本でされたことになります。でも大黒さんは日本の居心地がきっと良かったのでしょうね。従来の怖い夜叉のようなお顔は消えてニコニコ顔でいらっしゃいます。古来日本にあった恵比寿さんと共にセットで招福開運に用いられています。
布袋さんのみ、中国の禅宗の契比(かいし)という実在のお坊さんです。神様方の中では一番貧弱で抱えている布袋もなにやら浮浪者のようです。事実放浪癖があり家々の軒先に立たれて物乞いをしたり、占いで吉兆を見てそれが外れたことがなかったとも言われています。教養も深く弥勒菩薩の生まれ変わりと人々には言われたそうです。貧乏神のようにも見えますが、唯一実在人物というのが面白いですね。もちろん布袋さんのネーミングは持っている布の袋から。物乞いしたものや自分の身の回りの物を入れていらしたようです。
★七福神様ご一行の誕生秘話
では、何故これらの神様が七福神というセットになられたのでしょうか。一番初めは日本古来の神様の恵比寿さんだけだったようですが、鎌倉時代に大黒さん、弁財天さんが渡来されてまずこの三人で福の神トリオとなられたようです。宗教にあまりこだわらないのは昔からの日本人の特質のようで八百万の神と言いますから、トリオなんてまだまだ序の口なのでしょうね(笑)。
仏教方面からだけではなく禅画(水墨画)の材料として布袋さんなども親しまれていて、ついでと言ってはなんですが、福禄寿さんや寿老人さん、吉祥天さんや毘沙門天さんなども水墨画には好んで描かれて、ありがたい福の神々さんたちが揃っていった様です。
七福神のセットは禅宗の僧のお遊びだったという節が、私には面白く感じられます。『竹林の七賢人』を禅宗のお坊さんが好み、それに習って、ならば七福神となると誰なのかということでセットが組まれた、と。
そして江戸時代に天海上人が、家康に取り入るためにこのセットを用いて家康には長寿・富・人望・人徳・度量・愛嬌・芸道などがあるといって七福神信仰を持ち出し、家康は狩野何がしかにその絵を描かせて、やがてそれが一般町民にまで知れ渡って行ったと……。
まあ神様のことですから異説いろいろありましょうが、そんなことを感じていただきながら、これから「亀戸七福神めぐり」に出発します。
★香取神社(恵比寿様、大国様)――★亀戸3-57-23
亀戸の駅から明治通りをまっすぐ北に。蔵前通りと交差するところが亀戸4丁目の交差点。
今日はこの『亀戸4丁目の交差点』に何度か戻ったり通過したりしますので、ここはしっかり覚えてくださいね。
この交差点をさらに北上すると次の信号が香取神社前。神社のわき道から入ることになりますが、入ってすぐ左にお社がいくつも並んでいます。『福神社』というお社の中に大国様と恵比寿様がいらっしゃいます。御開帳の日しかお姿は見られません。正面の拝殿の右側に亀戸の名称の由来でもある亀ヶ井と呼ばれる井戸が再現されて湧き水があふれています。鉄分が豊富で赤茶色の水です。残念ながら飲料水には適しません。この香取神社さんは当下町探偵団サイトの『下町の顔』の記念すべき第一回『江東区最古の神社の宮司さん』として掲載されています。宮司の香取さんはちょっと見は気難しそうな方ですが、とてもお話好きで気さくな方です。下町の顔の対談を読まれてからお出かけになることをお勧めします。
★東覚寺(弁財天様)――★亀戸4−24−1
香取神社を出て亀戸四丁目の交差点にまで戻ります。その信号を亀戸のほうに向いて歩いて一本目の道を左に入るとすぐに東覚寺です。真言宗のお寺さんです。弁才天様は門を入ってすぐ左のお堂の中に。ガラス格子戸越しにいつでも拝観できます。弦楽器のヴィーナを左手に持たれています。インドのヒンズー教の神様ですから彫の深いお顔立ち。伏目の美しい姿です。思わず見とれてしまいました。
★常光寺(寿老神)――★亀戸4−48−3
東覚寺を出て左に。道幅があるわりには車があまり通りません。何だかゆったりした気分で歩いていけます。亀戸は全体に農道を思わせるような曲がりくねった道が多いです。この辺りも大通りとは言え道がゆったりと曲がっています。何だか気分がリラックスして歩けるのはそんな風景だからかもしれません。一本道です。左側に見えてくるはずです。常光寺、と探していきます。どこかで聞いたお寺の名前だと思ったら石川啄木が生まれたお寺も確か常光寺でしたね。そう、啄木は岩手県の姫神山にある日照山常光寺の住職であった一禎と母カツの長男一(はじめ)として明治19年に生まれています。余談ですけれども。
亀戸の常光寺が見えてきました。曹洞宗のお寺さんです。本堂の左側に瓦屋根のお堂があります。『寿老人堂』。各地の七福神の案内で「寿老神」と書いてある場合もありますが、一般的には寿老人が正しいようです。ここのお堂も寿老人堂です。御開帳の日でないと中は見られませんが、取材した結果、ここに御祀りしてある寿老人様は身長30センチとの事でした。
寿老人堂の横になにやら大きな像が。庚申さんです。申(さる)の日に、ここに心にあることを告げに来ると天上界の人に聞き入れてもらえるということだそうです。ただ願いが叶うということではなく、まあ愚痴を聞いてもらえるという範囲でしょうか。それからその横におわしますお地蔵様が阿弥陀仏様。由来には嫁姑の苦労で入水したお嫁さんの伝説があります。六阿弥陀様は北区、足立区、府中などにまたがっていて、六阿弥陀様を姑が信心で回るには2.3日かかります。その間はお嫁さんが家の中でほっとできるということのようです。ヨメとシュウトメの問題を抱えた人には実際に大変な修羅場があると聞き及びます。その悩みでお参りに見える方もこのお寺には多いそうです。
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亀戸4丁目の交差点に戻ります。信号を香取神社さんのほうに渡りきったら左折します。一つ目の路地は右に入っていくと香取神社さんの参道に向かいますが、この両側は下町の商店街らしくエッこんなに安く売っていいのォと言いたくなるお店が並んでいます。時間があったらぶらぶらしてみてください。
さて、入らない方はそのまま直進。次の信号で右折して普門院さんにいくのですが、オッとその手前の店先に
<親亀小亀孫亀、三段重ねの、乗りのいい亀パンを発見!> |