下町の顔 | FACE |
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★収集方法というのはネット以外になにがあるんですか? 中古レコード屋とか、他に専門店が集まるセールがあるんです。また、なんでそこまでと思われるでしょうが、たまに地方に足を運んでそういうお店を巡って出物がないか探したりもします。わざわざ高い旅費を掛けてね。 ★そのためだけに行くんですか。それはすごいな。でも最近はお宝ブームで、地方のものも出尽くしちゃった感じはないんですか? あるかもしれないですね。フリマでも、最近、皆さん高いとわかっていてむちゃくちゃな値段をつけているんですね。軒並み1万円とかね。 ★でも相場というのはなんとなく把握していますよね。 でもあえてそれを言うのもおかしいしね。 ★現存しないものという意味での収集するときの苦労ってありますか? 一つには全体像が解からない。資料がない。 たとえば普通のEPレコードですと国会図書館に必ず収める決まりがあって目録も管理されていますが、ソノシートはない。朝日ソノラマなどの製造元にも残っていないんですよ。
ここまで集めたら全部集めたいと思うじゃないですか。そうしたら後何枚集めたらいいのかということがわからないですね。 ★ああ、なるほど。でもこういう収集って終わりがあるからいいですね。新発売があったりするといつまでも続けなければいけないですものね。 ただ、今のところ終わりが見えない。 収集自体はそろそろ30年になりますが、存在は噂をされているけどいまだ見たこともないというのもありますしね。 例えば『ジャングルプリンス』というターザンみたいな内容のものがあるんです。実写ですがテレビでやっていました。 これなんかは人が持っているというのもきいたことがないんですよ。 ★でも水落さんだけしか持っていないものもあるんでしょうね。 いや、ないんじゃないですかね。やっぱりいくら発行枚数が少ないもので現存数が100分の一とか1000分の一になっていても当時5000枚出ていたものであれば5枚は現存しているってとこだと思うんですよ。私だけというのはないと思います。 ★一言で、これを集める醍醐味というのは? う〜ん。醍醐味……夢の続きみたいなものかな。なんて言うんですかね、上手く言えませんが、少なくとも私にとっては当時を再生できるパーフェクトアイテム。 ★聴くとがらりと意識が変わるんですか? 変わることは自分的にはないですけど、当時こうだったなぁとか、当時これを誕生日に買ってもらってアレとアレも欲しかったけどこれだけ買ってもらったとか、付随する思い出もよみがえってくる。 ★子ども時代を思い出す? あの時代をね。ノスタルジーですかね。 ★リアルタイムでテレビ放映も見て、同時進行だったせいもあるのでしょうねえ。 それはありますね。ビデオもないしカセットテープも普及していない時代ですからね。だから本当のお気に入りのテレビアニメを再生できる手段ですよね。 それは思ったときに絵はあるし音もストーリーも出てきますから。 また自分の中で膨らませることが出来るんですよ。絵と音の間にあるものというか超えるものというか、頭の中で再生して膨らませることが出来るんですよね。 そういった意味で本当の作品オリジナルとは違った楽しみ方が出来る。 ★小説と同じですね。文字しかないから自分でイメージするしかないですものね。 ああ、そうです。 ★今後の収集に関しての最終目標は? 全部制覇ですね。それから趣味としての目標は一つの資料としてきっちりしたものを作りたい。 私の思っているものは本なんですけどね。本にしたい。出版。
自己満足ももちろんありますし、世に広めたいのもあります。一つの文化だとも思っているんですが、資料がどこにも残っていないので、何とか一冊にまとめて後々残るようなものを作りたいですね。 3.水彩都市 ★小さい頃はどんなお子さんでしたか? おとなしい子どもでしたね。引っ込み思案なしゃべらない子。それを変えたのはこの趣味ですね。公にして会も作って、こういう魅力があるんだよということをどんどん発信し、PRをするようになりましたからね。 ただね、子供の頃は専門的に集めるのではなくて、切手で言えば封筒に貼ってあるのを水を使ってはがして集めるという世界。うちがものを買ってくれる家庭ではなかったんで、ソノシートは当時3枚くらいしかなかったですね。自分としてはもっとおもちゃなど欲しかったんですが、言える状況ではなかった。 だからその反動で集め始めたということもありますね。 ★ここらへんの町の話を教えてください。だいぶ変わりましたか? どの地域でもそうだと思いますが、かなり変わりましたね。 丸八通りは区画整理の前はもう少し狭かったですね。少し近くに東公園がありますが、昔は夏には公園で映画会なんかやってましたよ。のどかでしたね。 ★下町のいいところってなんでしょう? 江東区で言えば、水辺の環境が多いところ。昭和40年代後半は川の汚染が問題になったことがあるけど、水辺環境が多いところが財産かなと思いますね。 ★それは具体的にいうとどういうことでしょう? 水辺で遊べますからね。人間は水辺に惹かれるものがあると思いますね。さざなみをぼんやり眺めているだけでも癒されるところがあると思いますよ。ヒートアイランドの緩和にもなっていると思いますしね。 ★最後ですが、座右の銘とかポリシーのようなものがあれば教えてください。 あまり考えたことはないですが、趣味に関して言うと「見つけたら買え(笑)」。次に出てくる保証はないですから。高いのを買って安いのがあとで出てくるということもありますが、やはり見つけたときに手に入れるというのが必要だと思います。 ★じゃ決断力にしておきましょうかね(笑)。 奥ゆかしい水落さん。お持ちいただいた紙袋をのぞいたら水落さんの「夢のかたまり」が出てきました。近年、東芝EMIから発売されたCDです。「宇宙少年ソラン」「マイティジャック」「ちびっ子怪獣・ヤダモン」なつかしいアニメの主題歌集。水落さんも30年にわたる収集歴から資料を提供して完成したCDだそうです。 夢の結晶ですねと言ったら、まだまだ夢の途中ですとのこと。水落さんに相対すると童心に帰れたような不思議な気分になります。気持ちの良い取材でした。 |
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※2004年12月収録 |
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