下町の顔 | FACE |
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第14回 『Tシャツ文化を温めて・育てて』 |
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久米繊維工業株式会社社長 久米 信行さん |
錦糸町駅から四つ目通りを北上。蔵前通りとの交差点を左折してすぐのところにある久米さんの会社におじゃまをしました。案内を請うと物腰柔らかい方が登場。久米信行さんです。取材の前にTシャツのサンプルルームを見せていただきました。これまで手がけられたTシャツが一堂に集められていて、まるで美術館に来たのかと思うような上質な「絵」とカラフルな色、それらが大洪水のように目の前に押し寄せてきて、すごい!と言ったきり後は絶句、目が点になってしまった取材陣でした。興奮を引きながら取材に入りました。 1.残存者利得 ★はじめまして。三代目ということですが、始めはゲームを作ることをされていたそうですね。 ええ。違った業界での勉強もしようということで。なるべく繊維と関係のないところでとファミコンゲーム業界に。で、株のゲームがヒットしたものですから、そこから証券会社に移行しまして、お客様のお金のお医者さんみたいなシステムのソフト作りをしました。
そうですね……先に金融が壊れて、それから何年か遅れて景気が悪くなり、そして景気がどん底のときに株が上がりはじめる。そういうことをちゃんと勉強して知っていましたからね。父親も過去のいろいろなサイクルと、経営者ならではの動物的な勘とで、これから景気が悪くなるぞ、と言っていました。景気が悪い時しか勉強はできないから戻って来い、と。 ★帰ってきたくないという気持ちは? それはなかったですね、糸偏の仕事に戻るといいましたら、それは大変だと言われましたが、残存者利得というのがありますね。他に誰もやる人がいなくなっても続ける。伸びないかもしれないけれど利益は得られる。今は95パーセント輸入で国産メーカーはほとんどないですから。価値はあると思いました。 ★輸入95%というと、国内の関連産業も疲弊しているのでしょうね。 はい。大手紡績会社も国内の工場を縮小していますしね。葛飾に有名な三つの染色工場があったのですが、今は、足利に移転した一社だけ操業されています。 ★どこも無くなってしまうと、誰も作らなくなりますね。 そこで私たちの今年のチャレンジの一つは、経営が行き詰まった取引先の染色工場の再生です。川上のボトルネックをとりのぞいておくことが、残存者利得を得るための次の布石だろうと思います。どんなメーカーも、染色無し、紡績無しでTシャツ1枚作れなくなりますので。 ★今後、他の人はどうするのですかねぇ? ちょっと分かりませんね (笑) 。 ★Tシャツのピンとキリの差のつけ方はあるのですか? 糸と、素材の質ですね。例えば洗濯して10回も着れないものと100回してもOKなものとありますね。むしろ100回洗濯したほうが柔らかくなっていいという考えがあります。いいものを外着から最後は部屋着、寝巻きにまで愛用すると、トータルで着られる時間が長いので、1000円多く出しても得なのは明らかですね。 ★消費者も理解しているんですね。 リピーターは、そこのところはよくわかっていらっしゃるようですね。
この辺りはメリヤスの産地で、私の祖父の時代はステテコ、股引、肌着とかを作って横山町に納めていたんですね。戦後、敵性文化が流れてきたのが父の時代。映画の影響もありましたね。軍隊でTシャツを着ていました。かっこいい!と。 ★えっ、Tシャツって軍用服だったんですか? そうですよ。日本の感覚でいうと下着なんで初めは丸首と呼んでいたんです。丸首に色をつけてTシャツと呼称していくのが二代目の父の挑戦です。今と違って、同じものを着ていないとちょっと不安な時代でしたからね。JUNとかVANとかのTシャツを100万人以上の人が着ていましたね。でも父はやがて気がつくんです。DCブランドが出てきてこういう商売は長続きしないだろう、って。当たったら大きいけど当たらなかったら在庫増えますね。お客さんは在庫で悩む。それならば私たちが在庫を持てばいい。10枚単位でもお売りします。半製品でネームもつけないで持っていますから、電話・ファックス一本入れてくだされば明日届きますから、という商売に切り替えたんです。 ★相当な量を捌かれると思いますが、久米さんの会社自体どのようなグループ分けになるのでしょうか? 久米繊維は国産メーカーの本部です。福島に染色工場、千葉・茨城に縫製工場、そして埼玉にプリント工場があります。販社は「ジェントル」で、ここで個人向けネット販売のTギャラクシーと、法人向けの販社を運営しています。Tギャラクシーでは、どなたでも一枚から買えます。ただし値段は小売り値です。その代わりクレジットカードや代引きが使えます。10枚のロットケース単位で、振込確認後発送でよろしいのでしたら、法人向け卸売り対応になります。法人向けのネットショップも10月中にオープンします。そして、1000枚単位で作るお客様には、もちろん営業マンが飛んでいくのです。 |
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