江東活學大學

第9回

<プロフィール>
江東区青少年地区対策委員。白河小学校元PTA会長。江東区バドミントン協会理事。趣味:お酒・バドミントン。エビス印刷株式会社代表取締役。昭和28年生まれ。二児の父。清澄在住
『今、地域力の必要性』
小堀 修一さん

講演

●青少年委員会とは●
青少年委員会というのは東京都の組織ですが、江東区では教育委員会からの依嘱になっております。江東区は小学校単位の選出ということで43校+2校+小中学校の校長先生を入れて47名で活動をしております。目的は、青少年団体の養成・相談の指導者として集団活動を側面から手助けしていくグループワーカーということです、また教育委員会と連携して青少年の健全育成及び生涯学習行事を推進すること、地域社会の中で団体の交流を図るコーディネーターの役割を持っているということです。講習会もありまして、ジュニアリーダー、子供会育成指導者講習会などあります。年間行事としましては少年の船の手助け、少年キャンプ、区民祭り、成人式の手伝い、環境調査などもしております。
青少年対策委員会、俗に言う地区対ですが江東区は出張所単位で組織を組んでおりまして全部で九ヶ所です。職務内容は、地域の青少年に関する連絡調整と青少年の健全育成活動を行うことになっております。構成員は町会、自治会、保護司、民生委員、PTA、学校の指導主任等です。活動は地域懇談会、夜間実態調査、覚せい剤がらみなどもあります。私は地域の中で、少年補導員もしております。深川警察から推薦されまして警視庁から依嘱という形です。枝川青少年センターというところに所属をしております。街頭補導などもしております。警察権と違いますから、突っ込んで活動できないのがちょっとですね。仕方ないかなとも思います。補導員の中に被害者サポーターというのがございます。少年犯罪の中での被害者ですね。最近も問題になっていますが加害者よりも被害者のほうがいろいろ調べられていやな目にあうということがございまして、被害者サポーターというのができました。何かの被害者で困っていらっしゃる場合は活用していただけたらと思います。

●PTA活動のきっかけ●

この活動のきっかけですが、私の次男が小学校一年生のときに交通事故にあいました。脳挫傷という重い事故でした。その時とても大勢の方にお世話になりました。事故現場には、学校の先生、幼稚園の先生がついていてくださり、救急車に乗ったときも適切な判断と処置によって助かりました。事故後に救急車で運ばれた息子は、夕方になって意識不明となりました。そして5.6時間の手術。なんとか命は取り留められたんですが、首が曲がりました。一ヵ月半後退院をして学校に連れて行こうと思ったのですが、首が曲がったままなので嫌だというのです。で、同級生や近所の方々が親の私たちにも声を掛けてくれまして、救われた気がします。そのようなことがありまして学校と少しお付き合いするようになりまして、PTAにもお返しをしなければいけないのではないかと。怪しい(笑)誘いに乗りましてPTAにいってしまったわけです。どの団体でもそうですが、入るときは軽いことを言われましてね、だんだん重いものになっていくわけですね(笑)。白河小学校のPTA会長をやらせていただくことになったわけです。代々のPTA会長さんはなぜか僧侶の方が多くいらっしゃいまして、人前でしゃべるのは慣れていられる方々ばかりで、いいことをおっしゃるんですね。感心するようなことを。自分はそんなことはできないとお断りしたんですが、そろそろ一般人の小堀りにやらせてみよう、ということになってお受けしました。青少年委員と会長職と二束のわらじを履くことになりました。一期二年ですが青少年のほうはその後8年やらせていただいています。若い頃は私もろくでもないことばかりをやっていたのですが、青少年委員ということで自分も少しは襟を正して、ということがありまして、いろいろな方と会う機会がありますので、その出会いに感謝しております。関心の幅も広がりよかったと思っています。

●青少年活動の中で●
青少年活動の中で環境調査というものを毎年やっております。青少年に対する悪影響を及ぼす環境については、充分な配慮が必要になります。江東区内の子供を取り巻く環境調査を実施して、各地域の委員から報告された取り組み提案などを認識して、解決の糸口を見出すことができるように動いています。ここに平成15年1月に出されました「青少年の環境調査報告書」という冊子がありますが、この中に地域の中で意欲的に取り組んでいることが列挙されています。今までは、箇条書きで有害商品の販売、自販機・ゲームセンター・落書き・ビデオ店・カラオケ店などの調査があったのですが、台数等を調べるだけではどうしようもないということで、自由形式にして改善しつつあります。各地域の特色がありまして、例えばニ亀小の取り組みですが、子供たちにボランティア手帳を持たせて、色々なボランティア活動をして自分の力で自分自身を育て抵抗という試みがあります。子供たちも何かを進んでしていく意識を高めることができて、地域の中での密接なつながりの一つとなります。また砂町地区ですが、夜九時になると団地の廊下に水をまくというなかなかユニークな試みもあります。子供たちのたむろを防ぐことですが、これもかなりの成果を上げています。
この環境調査の中に表示図書陳列調査というのがあります。青少年には見せてはいけない有害図書の陳列調査です。優良コンビニでは別売しているようですが、残念ながらその数は少ないです。ご存知の方、あるかもしれませんが、今日見本に持参しましたこれは少女コミックです。有害図書でもなんでもない一般の雑誌ということですので、当然一般の漫画本と一緒に売られています。区分けも何もされていません。どこのコンビニに行っても区分けをされていません。これは後でまわしますが、見るに耐えないひどいものです。全頁ひどいです。小学生は買わないでしょうが、中学生などは買って廻し読みしているという実態も調査されています。もっとまずいのは、この中にテレクラの募集、時給5000円、1万円という誘いの文句がかなりのページに渡って載っていることです。今の子供たちは携帯電話料金などがかかりますね。安易に稼いで払えばいいや、簡単にお金が儲かる道をと子供たちも思います。広告は、当然、テレクラでもそんなに危なくないと書いてあります。子供たちの認識には"ちょっと電話に出るだけでいいや"という誤解も生みかねません。今日参加された皆さん、コンビニという身近なところにも青少年に悪影響を及ぼす雑誌があることを知っていただいて、身近の子供たちを守ってやって欲しいと思います。

●地域の力に●

PTAの話に戻りますと、行事が多くてお母さん方が困惑するという懸念があって、行事を一つずつ潰してしまうような傾向もあるようです。でも、少子化でお子さんが少なくなれば、予算の少ない中でどうやってやるのか、そこをもう一度みんなで考えていく必要があると思う。白河小学校では魚釣りたい会を各学年でやっていました。例年、児童だけで終わっていたんですが、これって親子で釣り大会をしたら面白いよって、案を出したんですね。僕が。お母さん方から、またまた仕事を増やすのかとブーイングだったんですが、まあまあまあと、やってしまったんですね。でも当日お手伝いに来てくれまして、やり終えてよかったなぁと思いました。
最近よい話を聞きました。ある校長先生は、夏休み前に教員にテレフォンカードを渡すそうです。これで夏休み中に受け持ちの子供たちに電話を掛けてやって欲しい、と。先生からの電話を、何人かの子どもたちは待っているかもしれない、と校長先生は言うのですね。「どうだ、元気にしているか? 」そういう先生からの電話は子どもの活力になる。夏休みでも先生は見ていてくれるということ。これがいいんですね。この校長先生の気持ちは大切なことだと思います。地域のこととか学校のこととか、いろいろな取り組みをお話させていただきましたが、子供たちの原点として家庭の存在は大きいと思います。例えば万引きにしても、他人のものに手をかけないという家庭での親の教育が重要な役目をするわけです。怖い親は必要です。また同時に怖い地域のおじさんというのも必要です。街で見かける未成年の喫煙などは地域力の必要性を感じます。怖いだけの存在ではいけないですから、子供たちに声をかけて挨拶を交わすところから始めて知り合いになっていき、親しさがあって挨拶で返ってくる、と。そうすれば叱ることもできるし誉めることもできます。指導員という立場も難しいんですよ。指導員手帳を出して、補導したいなと思う少年にオイコラッ!って声かけられない。警察じゃないんですからね。言われた方だって警察ではないと分かれば、何だよオヤジって向かってくることもあります。地域の中で青少年にかかわることで我々が勉強していくことも多いと思っています。

質問コーナー

Q:警察との話し合いはあるのですか?
警察で講演会や懇談会がありますので、そこでいろいろな話をします。私たちではどうしようもないようなことも話し合えます。ビデオレンタル屋さんも結構ひどいところがありまして、10台くらいのモニターがあって全部それ物、ぼかしのないもの、それにつきましては街頭補導している途中に、警察の方に一緒に行っていただくとかしています。

Q:環境調査報告の中ではまだインターネットが取り上げられていないですね。その辺りは?
その辺りは片手落ちであったかと思います。弊害は出てきています。青少年育成の中に持ち帰ってみたいと思います。

Q:ネットは非常に数が膨大で、有害な画像や文章が氾濫していますね。アクセスし放題ですが対応は?
地区では対応しているところもあります。子供たちより保護者のほうが使えなくて、パソコンを使える講習会を開こうという動きも出ています。痴漢ゲームというのもあるようで子供がやっていても両親が来たら、ぱっ!と消してしまえますから分からないですね。有害図書にもおまけとしてCD-ROMが付いてくるのもあるんです。今後の課題です。

Q:有害図書は出版社がターゲットを決めて、より売れそうな形で本屋やコンビニに置くような戦略をとる。だから、子供の目に付かないようにするだけでは駄目で、例えば具体的なことでいうと、雑誌社に電話して、「この漫画読んだけど気持ち悪いんだよね」と自分の感想を述べるだけでもいい。そういう行動をとる必要があると思います。ハードかソフトに変わるだけかもしれませんが、根絶やしにしょうと思うのならあの手この手でやっていけばと思います。
そうですね。いろいろな手段で売ることができないように動くことは必要ですね。

Q:この手の本は、本来なら専門店で売るべきなんですね。姑息なんですね。専門店に入っていくのが恥ずかしいという層を狙って、一見何気ない表紙で作ってますね。売り手側のマーケティングが勝ってしまっている。ほかのものと混ざて何気なく買わせる。買う人はアダルトショップに堂々と入って買えばいいですよ。日本はそういうところが社会が習熟していないというところなんですね。文化を大事にしないということですね。
そうだと思いますね。それぞれの地域の中でしっかりと大人が見つめていかなければいけないと思います。

(2003年5月8日収録)文責:室井朝子